AYUMI ARCHITECTS AND DESIGN

互いの知恵から力が生まれる
それを創る〝仕掛け〟を建築で

50年の礎を築いてきた先人。
今、共に目の前の課題に向かう人。
たくさんの人々がここに集い、
交錯し、歴史を刻んできました。
既存の思い込みや垣根を壊し、
人と人の関係性をさらに深める
〝仕掛け〟を盛り込んだ社屋では、
自然に人が行き交い、言葉を交わす。
互いの知恵からアイデアが生まれる。
そのアイデアが力になる。
そんな空間で、未来の50年に向け
新たな歴史が刻まれていきます。

STORY

人の動きを変えマインドも変わる
新しい働き方を体現する社屋とは

建設コンサルタント会社として創業50周年を迎える株式会社エーティック。旧社屋の老朽化に伴い社屋の建築を計画しましたが、ただのリニューアルではありません。これを機に仕事のあり方を見直し、コミュニケーションが生まれる仕掛けをふんだんに取り込んだ新社屋を建設しました。
このプロジェクトにはアユミ建築設計代表の伊東祐一が構想の段階から携わり、舟田幸太郎社長と伴走して新時代の働き方について学びながら計画を進行。また、社員にこの考え方を浸透させ、主体的に取り組めるよう促したのが髙橋英樹企画本部長です。
株式会社エーティックが社屋の建築を通して辿り着いた新しい働き方について、3人で語っていただきました。

【2023年9月12日追記】2023年度 第36回日経ニューオフィス賞 北海道ニューオフィス奨励賞を受賞しました。

舟田 幸太郎(ふなだ こうたろう)

株式会社エーティック 代表取締役社長
一級建築士

札幌市出身。北海学園大学を卒業後、建築会社に就職。一級建築士を取得後、創業者である父の勧めもあり1999年に株式会社エーティックに入社。即、大阪の橋梁メーカーへ出向し土木の基礎を学ぶ。本社復帰後も10年あまり技術職として経験を積んだ後、執行部入り。2014年、40歳で代表取締役に就任し、現在9期目を迎える。

髙橋 英樹(たかはし ひでき)

株式会社エーティック 企画本部長

妹背牛町出身。深川西高等学校を卒業し、大学1年のころより北日本計測コンサルタント株式会社(現:株式会社エーティック)にてアルバイトとして勤務。会社の居心地が良く、1988年に正社員として採用、現在まで34年間にわたり同社一筋で貢献する。2021年度より現職に着任。

HISTORY
2019.06.11
顔合わせ
2021.02.22
増築計画第17案完成
2021.04.10
新築計画へ方針変更
2021.08.31
設計完了
2021.11.01
工事着工
2022.09.30
工事完成
2022.10.17
新社屋へ移転
縦割りから、協働・協創ができる組織へ
株式会社エーティック
代表取締役社長 舟田幸太郎さん
創業50周年のプロジェクトとして新社屋の構想が生まれたと聞きましたが、どのようなプロセスで進んでいきましたか?

舟田幸太郎(以下、舟田):先代が苦労して建てた旧社屋は、40年近く使い古くなっていたため、2023年で50周年を迎えるのに合わせて、増改築を記念事業としたいと考えました。プロジェクトの大きなキーワードに第二創業というのがあります。全てを新しくするのではなく、先人たちの礎を生かしながら、この先50年どうやっていくか。当社は土木建設コンサルタントであり、仕事の原点は専門家が融合して総合力でコンサルタントとしての力を発揮し、お客様の問題解決をすることです。ただ現状では部署ごとの縦割り意識が強く、自分の机で仕事をして会議室で会議をして、ということではクリエイティブな仕事を考えると物足りない。今後生き残るためには「協働」、「協創」、「スピード」が大切だと考え、社屋もそれに則って考えていくことにしました。
そこで、大学時代の同期に相談し、建築業界の知人で私の性格に合う設計士を紹介してほしいと言った時に、連れてきてくれたのが伊東さんです。年齢も一緒で、一回飲んだら意気投合して。私の思いがすんなり伝わる、浸透していくのを感じたので、この人にお願いしようと思いました。

当社代表 伊東祐一

伊東祐一(以下、伊東):2019年の6月、紹介してくれた方の「伊東さん事務所の設計できる?」という漠然とした一言で始まりました。その時、舟田社長には具体的な要望は無く、すごくやりたい遠いゴールはある。とにかく、社内が縦割りで分断されているのを改善したいという要望が強かったです。そのためにどうしたらいいかを探す手探りの作業が始まりました。
50周年のスケジュール感として3年くらい時間があったので、竣工は2022年秋、21年秋から工事、21年春から設計と考えると2020年はゆっくり考える期間が取れました。それで最新のオフィスの在り方を勉強していくうちにフリーアドレスという概念に辿り着き、あちこち見て回ろうというのが半年くらい続きました。ゴール設定を見直して修正をかけたことも多々ありましたが、私から見るとそれがわかりやすく、どうやったらそこに行けるか道筋を考えていきました。

舟田:私が伊東さんに最初にインスピレーション受けたのは、伊東さんの事務所名の「アユミ建築設計」でした。由来を聞いて「お客様と歩む」ということで、「私はかなり戻りますよ、ここまで行ってやっぱりやめたとかあると思う」と言ったら、「うちはアユミ建築ですから」と言ってくれたのは大きいですね。

伊東:本当は増築リノベーションの予定だったんですよね。切り替えたのは1年半くらい議論してから。 建築費を検討する段階になって、同じ規模で増築リノベーションと新築で20%くらいしか違わないとわかったのです。そこから何十年を見越して自由自在にいろいろなことができる、建物の規模も大きくできるということで、報告から数日で「新築にするわ」と回答が来ましたね。
新築となると設計内容も変わるので、車庫を増やしたい、3階で全員ワンフロアいけるねと新たな欲が増えました。ただ、これまで充分に議論していたので理想の条件設定、概念的なゴールは変わらず、その分スムーズに移行できました。

ワークショップを経て、社員主体でレイアウトを決定
応接会議室は壁紙にもこだわり重厚感のある雰囲気に

舟田:社員に社屋新築のプロジェクトを発表したのは、2021年の年明けです。50周年に向けて、企業クレドも作りました。エーティックは何のために存在し、どういう気持ちで働いていくのかを示す指針で、ACS(A−TiC Culture Standard)と名付けました。二つ目に、それに則って人材を育てるために成長支援制度、人事評価制度改革を行う。そして三つ目に社屋の建設、これを三本の矢として、同時に進めていくことを発表しました。
それを社員に落とし込み、間に立って調整するのが高橋本部長です。高橋本部長は私が入社した時の大先輩で、約40年のベテランです。

株式会社エーティック
企画本部長 髙橋英樹さん

髙橋英樹(以下、髙橋):舟田社長も当初から言っていましたが、建物は器で、ACSは中身です。新しい建物に移っても思想が古かったら元に戻ってしまうので、中身も同時に変えましょうということになりました。社員は通常の仕事でも忙しいので、全部一緒にやるのは無謀、とんでもないという無言の抵抗は感じましたが、現状維持は衰退ですから、これから進んでいくためには必要だと信じ、三本の矢を全部進めていきました。
私は長年舟田社長と付き合っているので、舟田社長、社員がそれぞれどう思っているかがよくわかります。その上で、大切なのは次の世代を育てることだとより考えるようになりました。会社が良くなる、大きくなるためには、黙って実務をやっているだけでは会社は前に進まない、それをわかってくれる社員を増やしたいと思います。

舟田:高橋本部長は進むべき方向に向かって、戦いながら体現してくれます。議論しながらこうしていこうと決まったことは走ってくれて、駄目だと思ったらきちんと言ってくれます。あの人が辞めたとかこんなことをやって伸びたとか、一番社内のことをわかっていて、人のことをわかっているのは建築を作る上でも大事なことです。社員もすごく大変だったと思いますが、よく付いてきてくれたと思います。
2021年の初めに社内に勉強会のチームを立ち上げました。オフィスはABW(Activity Based Working)という概念に沿って、フリーアドレスを取り入れる。それを形にし、取り残される人が出ないよう、今回オフィス家具を発注したコクヨ北海道販売株式会社(以下コクヨ。担当:山口美笛、安達巡美)さんにお願いして何人かずつに分かれてワークショップを行いました。コクヨさんは白石でフリーアドレスを実践しているオフィスを開放しショールームにしています。それを見学してカルチャーショックを受けてもらい、ワークショップを行い、社員のマインドの地ならし作業をしました。ワークショップではただ配置を考えるのではなく、基本的な仕事の仕方の中でなぜこういう配置なのか、なぜこの椅子とテーブルが必要なのか、考えさえる議論の仕方をしてほしいとリクエストしました。

協創ラウンジはフリーアドレスの
オフィススペース
写真提供:コクヨ北海道販売株式会社

髙橋:社屋の仮の図面はできていたので、縮尺を合わせてコクヨさんのオフィス家具の切り抜きを載せて、舟田社長や私は入らずに、自分たちが作りたいオフィスを自由な発想で議論してもらいました。
最先端のフリーアドレスの空間で実際に働いている人が進めてくれるから説得力があり、わかりやすかったと思います。コクヨさんの立ち位置は大きかったですね。新しい空間に今までやっていた仕事をどう配置するかという考え方になりがちですが、その考え方を変えるのが一番大変だったと思います。社員が図面を読めて理解が早かったのが救いでしたね。

舟田:このプロジェクトの肝は、部署間の交流を深めたい、縦割りをほぐしたいというテーマです。専門性が高いので部署内で完結してしまうことが多いですが、コンサルとして総合力を付けるためには垣根を外すことが必要だと考えています。
以前は部署ごとに3フロアに分かれていて、それぞれ全然違うカラーでした。「俺たち3階は」「2階の奴らは」という言葉が自然に出てきて、それは居心地が悪いとずっと思っていました。そこで考えたのがワンフロア構想です。部署の垣根をどうすれば取り払えるか、それに対してフリーアドレスは目的に適っているかを考えていきたかったのです。部署ごとの違いや機密性の高さの問題もあるので、全くバラバラではなく数人単位の「グループアドレス」にするのか、そういったところを議論してもらいました。
そして、工事会社が決まり建築が始まってから、本格的なレイアウトを決めました。その際トップダウンではなく、有志を募ってレイアウトを決める委員会を作りました。コクヨの担当の方にサポートしていただき、私も高橋本部長もタッチせずやり方も任せて自由に進めてもらいました。
この業種は、技術職ですが実は合意形成の仕事です。地域住民の賛同を得たり、説得したりという部分が必要で、工学半分、対人半分くらいです。そこが磨かれていないエンジニアはいわゆる悪い意味での職人さん。そうなってほしくないので社員主体での合意形成を大切にしました。

気軽な打ち合わせやディスカッションは
オープンな空間で

舟田:社員に決めてもらった結果、部署ごとに希望を募って6対4の割合でフリーアドレスになりました。意外にやってみたい人が多かったのは、予想以上の反応です。固定席になったのは、総務や経理、機密性の高い営業職などコンプライアンス求められる部署や、設計など内業が多い部署です。現場調査主体の部署はほぼフリーです。
ここからがスタートなので、固定席になった人も「フリーもいいね」と言っており、また変化していきそうです。建築、場、組織はみんなで育てていくものなので、ゆるくやりましょう、というスタンスです。

髙橋:私はシステム、ネットワーク、受付といった仕事のインフラの調整を担当していました。フリーアドレスにするなら内線電話は?と考え、携帯電話に内線を組み込むことになりましたが、「会議中、移動中どうする?」「出なければいいんじゃない」など、運用方法は明確な答えはなく、まだ進めている最中です。

舟田:什器のデザインだけは、全体のコーディネートがあるので伊東さんと私で決めました。図面上ではわからない部分もあり、外観を含めCGもたくさん作ってもらいました。伊東さんの事務所でCG検証もしました。

伊東:コンセプト上、誰がどこにいてもいい空間にすることが必要でしたので、椅子は多様な色を使いつつ、木目は明るい色、スチールは黒と、建築に使う素材に合わせて統一感を持たせ、かつ画一的ではない空間を目指しました。

必然的にコミュニケーションを生む仕掛け
オフィスキッチンは立ち寄った
社員同士で会話が生まれる
「協造」「協創」がテーマに掲げられていましたが、それは社屋にどのように体現されていますか?

舟田:コミュニケーションのコアは2階にあります。3階建てですが、トイレは2階にしかないので、3階のフロアから必ず来なければいけません。普通のオフィスはフロアごとにトイレ、給湯室があり、そこで完結するので、人が動かない弊害があります。2階にはオフィスキッチンという給湯室があります。一般的に給湯室は暗いイメージがありますが、ここではお茶を入れたりコップを洗ったりするために来て、アイランド型のキッチンを囲んで普段話さない人とも偶発的な会話が生まれます。その仕掛けが一番大きいです。人は会った方がいいし、部署が違っても話をするきっかけになります。

伊東:このオフィスキッチンは、仕事するのにも快適な空間ですが、一日中居たくなったら固定化してしまうのでコンセントは作りませんでした。バーカウンターになっているので、いろいろな人が入れ替わり来られるようになっています。どちらかというと軽い打ち合わせなどリラックスした仕事をするのに向き、集中力が高まる場所ではないですね。

椅子の色で変化を与えつつ統一感を
持たせた協創ラウンジ
写真提供:コクヨ北海道販売株式会社

舟田:2階のフロア中央は協創ラウンジと名付け、単発的なコラボレーションが生まれる空間です。今日の午前中も、2階の大きいテーブルで仕事のレビューをやっていて、珍しい人が集まっているなと思いました。外部の人と打ち合わせをする会議室や移動式のパーテーションもありますが、個室じゃなくてもできることはたくさんあります。「会議しますよ、集まって」でなく、「お前とお前ちょっと来て」で気軽に集まり、他の部署の人がのぞいて口を出せる。「俺それ知ってるよ、違う仕事でそこ行った」などという話ができます。
さらに、こだわった部分はトイレです。内装にこだわり、以前の2倍の広さでゆとりを持たせて快適性を上げ、居心地を良くしました。トイレに行くとウキウキしたり、偶発的な会話が生まれることも期待しています。また、特に男性は鏡を長時間見ないことも多いので、鏡を多くして自分自身を見る時間、外に対する自分を整える時間ということも意識しました。トイレにロッカー室もつなげて、身を整える空間になっています。女性トイレは建築全体から見ても力が入っており、百貨店のトイレにも負けていないと思います。

鏡や照明にもこだわった、
ゆとりのある配置の女性トイレ

伊東:空間づくりで意識した点は、「部屋」を感じさせないことです。3階から続く木目の部分は散歩道として、歩く中で曖昧にオフィスキッチンが出てくるなど、なるべく線引きをしないで柔軟に繋げています。「○○室」という空間を極力作っていないので、来年、再来年と違う位置に椅子があるかもしれません。
また、避難安全検証法を用い、排煙窓を作らず火災の際は天井に煙を溜めている間に人が避難できるように計算する設計方法を導入しました。そのため、より隔てるものを作らずシームレスな空間が実現できました。天井は梁を全部見せて、安全と同時に圧迫感を軽減しています。
3階は、事務所を人数と面積で割ったら特別広いわけではありませんが、部屋が少なく極めてオープンな空間でまとまっているのが最大の特徴で、ゆったり使えている感覚があると思います。フリーアドレスでパーソナルな部分を狭めにできたので、その分、共同の作業スペースや個人ロッカーなど他の機能に面積を振っています。

フリーアドレスと固定席がある3階の
オフィススペース
写真提供:コクヨ北海道販売株式会社

舟田:2階、3階共にオープンな空間ですが、セキュリティーは固めてあります。公共の仕事をしていて守秘義務が極めて高いので、情報漏洩防止は徹底しています。データ管理の仕組みや打ち合わせをしていても声が聞こえにくい部屋なども作りました。
その半面、守秘義務があってもこういう空間はできることが体現できたのは大きいです。守秘義務は、こういったオープンな空間にできない理由として上がりがちなので。
実際に、北海道の地場の同業者でこのようなオフィスは見当たらず、同業他社の視察依頼が多いです。社員にとっても、「俺はこんな素敵なところにいる」と自慢になってくれたらうれしいです。社員の家族にも見てもらいたいですね。特に子どもを呼んで、お父さんお母さんが日中何をして頑張っているのかを知ってほしいです。
これで社屋は完成ですが、1年使って場所によって使用頻度が高い、低いが分かればレイアウトチェンジして 満遍なく使用頻度が上がる仕掛けにしたいと思います。社員が今、自発的にアンケートを取っており、初期衝動から1カ月、半年、1年で違う意見が出ると思います。社員自治が裏コンセプトだったので、それも狙い通りです。

入社順に役員・社員の名前が
刻まれたヒストリーボード

伊東:もう一つ特徴的な部分は、1階のヒストリーボードですね。

舟田:これまでの50年、先人に感謝するという意味で、1階のヒストリーボードがあります。この社屋を建てられたのは先人たちの礎があってこそで、自分たちが生かされていることを昔のことを知らない社員にも伝えたい、何か形にしたいと考えました。一番下に創業者である父の名前があり、全員入社順に名前が記されています。もう辞めた人や、亡くなった人もいますが、積み上げてくれたピースとして全員の名前を入れました。

伊東:これのすごいところは、舟田社長も中間のどこかわからないところにいることです。自分が上とか目立つのではなく、あくまで入社順に。

この先の50年に向けて、働き方を進化させる
膝を合わせて話ができる協創ラウンジのソファー席
社屋が完成してここからがスタートと仰っていましたが、今後のビジョンをどのようにお考えですか。

舟田:これまでの50年を節目に、この先50年を業界の中でどう生き抜いていくかを考えると、今飛び交っているAIやIoTやDXといったものはツールとして大切ですが、仕事の本質は変わらないと思います。
社員によく伝えるのは、目的と手段を整理して仕事しましょうということです。私たちの仕事では設計や調査が目的になりがちですが、それらはあくまでツールであり、先にある問題を解決するのが本来の目的です。目的を達成するにはあらゆる手段を講じ、いろいろな人の力を借りて英知を集結していくのが、仕事の本質です。便利な世の中だからこそ、そこにより一層フォーカスしていけば、必ず有益な会社になると思います。設計は自動になるかもしれませんが、人とつなげる仕事は残ります。それを考えれば必ず伸びていけるし、それを体現するオフィスができたと思います。
目指すべき姿は、このプロジェクトで明確になりました。これまで各フロアに分かれ何日も会わない、下手すると半年会話してない人もいました。新社屋になって、常に顔を合わせることができるので、なかなか話せなかった社員とも話せるようになり、これまで考えていたことが間違いではなかったと感じることができます。大きな投資でしたが歯車が動き始めている感覚があり、社員が「思ったよりフリーアドレスが楽しい」と言ってくれることがうれしいです。

髙橋:そういう人が言葉に出して言ってくれて、いずれは全員フリーアドレスにしたいですね。「固定席は不利かな?」くらいに思ってくれれば。
縦割りを壊して横のつながりを広く持ってもらって、「うちの部」ではなく「うちの会社」という感覚を強くし、横の流動性が出てくると、当社の強みになると思います。これから生き残っていくためにも、社員のマインドをその方向に持っていきたいです。

舟田:今回のプロジェクトでは、良い仲間に恵まれました。社内もそうですし、伊東さんを始め、コクヨさんもオフィス家具の提供だけではなくパートナーとして関わってくれました。施工会社の山崎建設工業株式会社の担当をしてくれた澁谷竜之祐さんは20代で、これくらいの規模の建設は初めてでしたが一生懸命やってくれて、他社ですが若い人が成長していく姿を見るのは価値があったと思います。
私はこういうことが好きなので、大変だったけれど楽しかったです。建築を仕事としてやっている人と好きでやっている人がいて、伊東さんは好きでやっていると感じます。

伊東:確かにそうです。9月末に竣工して、今ロスが大きく心に穴が空いたようですね。お客様と一緒に一生懸命歩んできた実感があると、振り返ってもうれしいものです。完成した建物の中で、何十人もの人が働いている姿を見られるのは感慨深いものがあります。寸法と形はわかりますが、人が何かをしている姿はその先にあるものなので。
このプロジェクトは良い設計ができたと共に、働くことや人との関係について皆さんと一緒に考えることができました。これは設計の仕事を飛び越えて価値あることですし、今後の仕事として自分に落とし込めるものがありました。これからエーティックの皆さんがどう働くか気になりますし、来年どう変化するかも知りたいです。可能なら口を出したいですし、一緒に成長できたらうれしいです。完成して寂しいから、また遊びに来ます。

株式会社エーティック
北海道札幌市西区二十四軒1条5丁目6-1
TEL 011-644-2845
http://a-tic.co.jp/
  • 文:細川美香(合同会社ハーヴェスト)
  • 写真:寺島博美(コトハ写)